この日。。

 帰りにおばさんの家に寄ったら14歳になるピンシャーがいた。通称クロちゃん。左目が白内障で蝋のようになっている。右目は黒々しているが緑内障で見えない。つまりは全盲の老犬であった。
 しかし、犬の了見は健在で鼻と耳でよそ者を察知。吠えたてる。吠えるたびに首が揺れて餌をねだる雛のよう。鼻先に指を持っていくと臭いを嗅ぎながらガブリと前歯で噛まれた。痛くはない。床に降ろすとまた吠える。吠えるたびに足元がおぼつかない。
 目に薬をぬっているために年季の入ったエリザベスを付けていた。
 そう言えば二代目チーちゃんも晩年は白内障で目の奥が雲のように濁っていた。結局、腸の癌で死んだ。犬だって人間と同じ動物だから人と同じ病気にもかかる。
 長生きするにしても健康第一。
 久しぶりに弟に会った。弟の家には吠えたてないように声帯を除去された柴犬がいた。名前は忘れた。元の飼い主が飼えなくなり貰った犬。二代目チーちゃんが吠えると柴ちゃんも負けじと吠える、かすれた音が喉の奥から出るだけだがやはり犬の了見は忘れない。
 その柴犬が死に府中の犬猫霊園で火葬にした。まるで標本のように頭からシッポまでそのままの白い骨の姿で出て来たことに弟は驚いたと言う。そのままの姿で寺に預けることにした。何年かすると、合同葬にしますがどうします、と連絡があり家に引き取り今は骨壺に収まっている。
 この日は親戚に不幸がありまだ大学生の娘と高校生になったばかりの子供を残して喉頭癌でみまかった人がいた。優秀な国際弁護士で子煩悩な、いとこの夫でした。まだ、54歳。後に残された家族、親族、法律事務所の人々のショックは計り知れない。
 従妹に「これからだね。」と声をかけると「そうです、ここで立ち止まっていられない。」と答えた。
  気丈でした。 

塩田剛三先生直伝
合気道 小山田道場